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「暴行・傷害」に関するお役立ち情報

傷害事件における示談金・慰謝料相場と弁護士依頼のメリット

  • 文責:所長 弁護士 石田俊太郎
  • 最終更新日:2025年1月17日

1 傷害事件で示談する意義

⑴ 傷害罪とは

【刑法204条】

“人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する”

傷害罪は人に傷害を負わせた場合に成立します。

傷害とは人の生理的機能を侵害することをいい、①被害者の身体に損傷を与える怪我(打撲や捻挫等の軽傷から、骨折や四肢切断、植物状態等の重傷まで、死亡以外のすべてを含む)を負わせた場合だけでなく、②例えば、頭痛、腹痛、意識障害、失神、嘔吐などの症状を生じさせる場合や性病を感染させる場合、PTSDなどの心的障害を生じさせる場合等にも傷害罪は成立します。

傷害罪と似た犯罪として暴行罪(刑法208条)があります。

こちらは、暴行(物理的な有形力の行使)を加えたが、幸い相手が傷害(怪我)を負わなかった場合に成立するものです。

暴行行為によって傷害の結果が発生した場合には、たとえ傷害を負わせるつもりがなかったとしても傷害罪が成立します。

一方、暴行以外の方法で生理的機能を害する場合は、傷害罪は「故意犯」であり、犯罪事実の認識がなければ成立しません。

例えば、人に薬物を飲ませて昏睡させる行為は生理的機能を害する傷害行為ですが、ただの風邪薬と間違って飲ませた場合には、犯罪事実の認識がなく傷害罪は成立しません(過失傷害罪が問われる余地はあります)。

⑵ 示談の意義

傷害罪における示談とは、事件の加害者と被害者との間で、怪我の治療費や慰謝料等の損害賠償の問題を、双方の話し合いにより解決することを言います。

傷害罪に限らず被害者がいる犯罪の場合は、後述するように、被害者との示談が成立することで身体拘束から早期釈放されたり、不起訴処分となったりする可能性が高まります。

2 示談のメリット

⑴ 早期に釈放される可能性が高まる

傷害事件で逮捕された場合、警察署で留置後、検察庁に身柄送検されます。

そこで検察官が被疑者を取調べ、逮捕から3日以内に裁判所に勾留請求をするかどうか決めます。

勾留請求が認められた場合、被疑者は10日間〜20日間勾留されます。

被害者と示談することで、この身体拘束を回避できたり、身体拘束されても早期に釈放されたりする可能性が高まります。

⑵ 不起訴になる可能性が高まる

勾留期間満了までに、検察官は被疑者を起訴するか否かを決定します。

この検察官の判断の際に、示談が成立し、被害届が取り下げられているなどすると(傷害の程度や犯行態様にもよりますが)不起訴処分となることが多いです。

⑶ 最終的な処分が軽くなる可能性(略式起訴・執行猶予付き判決)

示談が成立した場合であっても、重大な事件であれば起訴されてしまうことはあります。

それでも、拘禁刑相当である事件が、示談の成立により略式手続きによる罰金刑に軽減されるケースも多々あります。

また、起訴され公判請求(正式裁判)となった場合でも、示談が成立していることにより執行猶予判決となることも少なくありません。

さらに、示談の成立により、起訴後の保釈請求を行った場合に保釈される可能性も格段に高くなります。

3 示談金の相場

示談金の相場は、個々のケースによって様々です。

結局のところ、傷害結果の程度、犯行態様、被害者感情、加害者の経済力等が加味されて決まります。

そうは言っても交渉事ですので、最終的には被害者の同意が必要で、被害者が納得しなければ示談が成立することはありません。

おおよその目安として、全治1〜2週間程度の比較的軽微な傷害の場合には、〜数十万円程度の示談金でまとまることが多いものと思われます。

一方、全治1か月を越えると比較的重い傷害の部類に入るといえます。

この場合の示談金は、100万円を越えることも少なくないでしょう。

後遺障害が残存してしまうケースだと、後遺障害慰謝料、後遺症による逸失利益の損害賠償も行う必要が生じ、より高額の示談金の支払いが必要となります。

4 示談交渉を弁護士に依頼するメリット

⑴ 被害者の連絡先情報を聴取できる

加害者自身が逮捕・勾留されている場合は、そもそも加害者が示談交渉を行うことができません。

逮捕・勾留されていない場合でも、警察官や検察官は、加害者自身に対して被害者の連絡先情報を教えないのが通常です。

この点、弁護士が代理人として示談交渉を行う場合には、弁護士が検察庁に被害者の連絡先等の開示を依頼し、検察官はそれを受け、被害者に対し、示談交渉の連絡のため連絡先を開示してよいか確認を取ってくれます。

弁護士には守秘義務をはじめとした多くの職業倫理があり、その信頼性から、検察官は被害者の了解を得て連絡先情報を開示してくれるのが通常です。

そうすると、弁護士から被害者に対する示談交渉のアプローチが可能となり、示談成立に至る可能性は格段に高くなります。

示談を拒否していた被害者であっても、「弁護士相手ならば」と示談交渉に応じていただけることが多々あります。

⑵ 冷静な対応が可能となる

加害者と被害者とが直接に示談交渉を行う場合には、やはり当人同士ですから、感情的になるなどしてしまい示談がまとまらないケースが多いです。

現に、「当初、当人同士で示談交渉を行っていたが、まとまらないので弁護士に頼みに来た」という方はたくさんいらっしゃいます。

弁護士は、卓越した法的知識・示談交渉能力を持っており、かつ適切な判断能力を有する専門家であることから、冷静な対応が可能となります。

⑶ 専門的な書面を用意できる

示談契約を締結する際には、単に損害賠償額を決め、これを示談書に盛り込むだけでは足りません。

後日の紛争を回避するために必要な個別具体的な取り決めを行い、より軽い処分を求めるために必要となる事項を被害者との間で協議・確認し、それを示談書の中に盛り込む作業などが必要となります。

そのような専門的な判断能力に立った協議・交渉及び示談書の作成は、民事・刑事の法制度全般に精通し、総合的な事案解決能力を持った弁護士でなければ難しいといえるでしょう。

【示談書の意味】

示談書には、当然ながら、刑事事件の処分を決める検察官や裁判官に対して、被害者との示談が成立したことを証明する意味があります。

それだけでなく、示談書は、民事上の損害賠償義務を支払い、既にその義務が消滅したということも表します。

先にも述べたように、傷害事件を起こした加害者は、被害者に対してケガの治療費や精神的苦痛に対する慰謝料等の損害賠償義務を負っています。

この損害賠償を既に行った、ということを示談書で証明し、これで支払は終了したという「清算条項」を示談書の中に盛り込むのです。

これを記載することによって、被害者から示談後さらに損害賠償請求をされるのを防ぐことができます。

また、示談書には「宥恕文言」を盛り込みます。

宥恕とは寛大な気持ちで許すとの意味であり、「宥恕します」「寛大な処分を望みます」「刑事処分を望みません」などの文言を指します。

これは示談により被害者の処罰感情が低減・消滅したことを示すものであり、この記載があるか否かによって、示談の意味・効果は全く異なります。

被害の損害賠償を請求するのは被害者の当然の権利ですから、示談金は受け取るが、宥恕文言の記載には応じないという被害者も少なくありません。

宥恕文言に同意してもらうよう粘り強く交渉することも弁護士の重要な役割です。

⑷ 示談金額を適正額に近づけることができる

上述したように、示談金額の決定には、最終的には被害者の合意が必要となるため、被害者の主張に左右されることが多いといえます。

ただ、示談金額の相場や算出根拠が全くないわけではなく、治療に要した費用・傷害の程度や治療日数を基本にして、目安となる示談金額を算出することが可能です。

したがって、弁護士に委任しておけば、目安となる示談金額を事前に把握しておくことが可能です。

それにより、目安となる額を大きく逸脱した主張が被害者よりなされた場合には、弁護士が交渉することにより、その額を適正額に近づける交渉を行うことが可能になります。

また、弁護士が交渉したものの、被害者の主張額とのかい離が大きく示談に至らない場合でも、弁護士より検察官や裁判官に対し、示談経過の事情を説明することにより、示談経過を斟酌した加害者に有利な処分を促すことも可能です。

5 刑事弁護を依頼するタイミング

傷害事件で不起訴を目指すときはもとより、執行猶予付き判決を目指す場合でも、できるだけ早めに弁護士に刑事弁護を依頼した方がいいでしょう。

勾留されない在宅事件の場合、警察での取調べも比較的ペースが緩やかで、警察から検察庁への書類送検もかなり時間を経ることがあります。

しかし、だからといって弁護士に刑事弁護を依頼しないでいると、いずれ検察庁から呼び出しを受け、場合によってはその場で略式起訴での罰金刑とする意向を伝えられることになります。

それから急いで弁護士に刑事弁護を依頼し、弁護士が被害者に示談交渉をしても、放置されてきた被害者としては「今さらなんだ」と、かえって被害感情が厳しくなり、示談が不成立となる可能性もあります。

示談成立の可能性を高めるためにも、警察沙汰になった段階で弁護士に刑事弁護を依頼されることをおすすめします。

6 傷害事件でお困りなら弁護士にご相談ください

このように、弁護士が示談交渉をすることで得られるメリットは多いです。

被害者のいる刑事事件では早期の示談成立が最重要となるため、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめいたします。

傷害の加害者となりお困りの方、身内の方の傷害でお困りの方は、お早めに弁護士にご相談ください。

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